名前 20(R18にご注意下さい)
生殖器にあたえられるこのなにものにもかえがたい痛苦にも酷似した空恐ろしい感覚というものを、もちろん省吾もよく知っている。
100ある視界のうちのたったひとつだけしかおぼつかなくなり、あらがうことなどおよびもつかぬ、いま自分をつよくとらえているこの力の導くところに諾々としたがう、ただもうそのひとつことだけしか考えられなくなってしまう。
それを手にいれるためだったらどんな狂態も痴態も恥ずべきこととは毛筋ほども思わず、室内どころか家中いたるところにまで響きわたるような叫び声をあげてみずからにあたえられ、またみずからもとりこぼすことなく深奥まで味わおうとしているその快感のむねをあいてに伝えあらわす。
性交というものはひとりだけでおこなうものではなく与え貪りあう共同作業だから叫びもしくは声なき声にかえたするどい、また籠もるような意思表明はおおむね正しく受けとられ、ともに行為にたずさわるその対象にいいしれぬふかい喜悦をあたえる。
いまおこなわれているこんな愛撫とも呼べぬような稚拙でささやかな愛撫にたいして、もちろんそれまでに奪うような口づけによってじわじわと感覚をせきたて、おいあげてやってはいたのだが、ことばもなくただひたすら浅くみじかい呼吸ばかりをくりかえす、そのあいまに拒絶とも熱望ともとれる舌足らずのちぎれた語をこうしてあいてからあたえられることは省吾にとってえもいわれぬ快楽だった。
身をよじり切なげにうねうねと腰をくねらせ敷布に複雑怪奇な波を作りだし嬌態をさらけだす優太が可愛くて可愛くて、青年の大腿にきつく押しつけているだけでけしてみずからの手で快感を引きだそうとはしていないはずの、びくびくと勃起した亀頭からぷつぷつと粘りある滴がいくたりもころがりおちては省吾の寝巻を気持ち悪いほどしめらせていた。
優太、とかすれ、急いたテノールで呼びかける。
「優太……ゆうた……ぼくの名前は……?」
男の声が耳殻にとどいているのかどうか、泣きはらした顔をぱたぱたと左右にふりみじかい髪をばらつかせるばかりで青年はまともに反応をかえさない。
親指と人差指とでくびれをはさみぎゅっとやさしく圧迫してやると、ちいさな叫びとともに優太のからだが魚のようにぴくんとはねあがった。
あいていた右掌を優太の眼前まではこび、涙で腫れあがった熱い頬を指先でたどっていき、ほどなくその口中にみずからの指を2本ふくませた。
「優太」響きにいいようのない媚びがこめられる。
「優太……ね……唾液……」
混濁した意識のなかでいわれるままに口中奥深くまで差しこまれた省吾のほそい指先を、音をたてて優太はねぶりまわした。
「ん……ん……」喉をならしながらその2本の棒を舌でいっしんにまきとっていくと、おどろくほど多量の粘液があふれだしぬらぬらとそこにまとい絡まった。
ほそめた目でうっとりとそれを見つめていたが、やがて指をおもむろにひきぬくとそのまま後にまわし、省吾はみずからの寝巻のズボンのなかへ唾液で濡らされたその指をもぐりこませた。
尻肉の奥まった狭い孔はもうとうに間欠的であることをやめ、つよい刺激を欲してものほしげに間断なくひくひくと収縮をくりかえしている。
つねよりよほど興奮しているのは悦楽にのたうつ青年の扇情的なすがたをまのあたりにしていることと、またこの行為がかれの退院以来ひさかたぶりにおこなわれたものだったからだ。
(「名前 21」につづく)
100ある視界のうちのたったひとつだけしかおぼつかなくなり、あらがうことなどおよびもつかぬ、いま自分をつよくとらえているこの力の導くところに諾々としたがう、ただもうそのひとつことだけしか考えられなくなってしまう。
それを手にいれるためだったらどんな狂態も痴態も恥ずべきこととは毛筋ほども思わず、室内どころか家中いたるところにまで響きわたるような叫び声をあげてみずからにあたえられ、またみずからもとりこぼすことなく深奥まで味わおうとしているその快感のむねをあいてに伝えあらわす。
性交というものはひとりだけでおこなうものではなく与え貪りあう共同作業だから叫びもしくは声なき声にかえたするどい、また籠もるような意思表明はおおむね正しく受けとられ、ともに行為にたずさわるその対象にいいしれぬふかい喜悦をあたえる。
いまおこなわれているこんな愛撫とも呼べぬような稚拙でささやかな愛撫にたいして、もちろんそれまでに奪うような口づけによってじわじわと感覚をせきたて、おいあげてやってはいたのだが、ことばもなくただひたすら浅くみじかい呼吸ばかりをくりかえす、そのあいまに拒絶とも熱望ともとれる舌足らずのちぎれた語をこうしてあいてからあたえられることは省吾にとってえもいわれぬ快楽だった。
身をよじり切なげにうねうねと腰をくねらせ敷布に複雑怪奇な波を作りだし嬌態をさらけだす優太が可愛くて可愛くて、青年の大腿にきつく押しつけているだけでけしてみずからの手で快感を引きだそうとはしていないはずの、びくびくと勃起した亀頭からぷつぷつと粘りある滴がいくたりもころがりおちては省吾の寝巻を気持ち悪いほどしめらせていた。
優太、とかすれ、急いたテノールで呼びかける。
「優太……ゆうた……ぼくの名前は……?」
男の声が耳殻にとどいているのかどうか、泣きはらした顔をぱたぱたと左右にふりみじかい髪をばらつかせるばかりで青年はまともに反応をかえさない。
親指と人差指とでくびれをはさみぎゅっとやさしく圧迫してやると、ちいさな叫びとともに優太のからだが魚のようにぴくんとはねあがった。
あいていた右掌を優太の眼前まではこび、涙で腫れあがった熱い頬を指先でたどっていき、ほどなくその口中にみずからの指を2本ふくませた。
「優太」響きにいいようのない媚びがこめられる。
「優太……ね……唾液……」
混濁した意識のなかでいわれるままに口中奥深くまで差しこまれた省吾のほそい指先を、音をたてて優太はねぶりまわした。
「ん……ん……」喉をならしながらその2本の棒を舌でいっしんにまきとっていくと、おどろくほど多量の粘液があふれだしぬらぬらとそこにまとい絡まった。
ほそめた目でうっとりとそれを見つめていたが、やがて指をおもむろにひきぬくとそのまま後にまわし、省吾はみずからの寝巻のズボンのなかへ唾液で濡らされたその指をもぐりこませた。
尻肉の奥まった狭い孔はもうとうに間欠的であることをやめ、つよい刺激を欲してものほしげに間断なくひくひくと収縮をくりかえしている。
つねよりよほど興奮しているのは悦楽にのたうつ青年の扇情的なすがたをまのあたりにしていることと、またこの行為がかれの退院以来ひさかたぶりにおこなわれたものだったからだ。
(「名前 21」につづく)
| …名前 | 2008-11-09 | comments(-) | TOP↑